「空き家大国」日本のゾッとする近未来

無計画な開発の果てに

いまの日本を滅ぼしかねない大問題は、「空き家」の激増だ。

それは、人口が減少するのに住宅はつくられ続けるという不可解な現実に由来する。

なぜこんなことになっているのか?  


いま日本中に空き家が激増している。

その数は今後も伸び続け、15年後には3戸に1戸が空き家になる計算だ。

戸建てもマンションもすべてひっくるめて空き家になる。

世界でも類を見ない「空き家大国」になるのだ。

空き家が大量に生み出される最大の要因として指摘されているのが、都市計画の欠陥だ。  

日本の都市計画は1968年にできた都市計画法にそって行われてきた。

これは住宅を造ることを前提にした高度経済成長期仕様の法律である。 

1968年と言えば、田中角栄時代の前夜。

すでに列島改造ブームの下地が整っており、そこに敷かれたのが都市計画法というレールだった。

つまり宅地開発をコントロールする法律ではなく、開発を容易にする法律であった。

市街化を促進する「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」を分けるという線引き制度と開発許可制度を導入していた。


当初はある程度は開発をコントロールできていた。  

その区別が政治的な圧力などによって「緩和」の大合唱によってうやむやになり、農地の中にポツンポツンと住宅や賃貸アパートが建つようになってしまった。 

住宅がまばらな市街化調整区域に家を買って住んでいる人は、「下水道を引いてくれ」と言う。

ところが、都市インフラを整備することは自治体財政には大きな負担となる。  

調整区域の本来の主旨は開発の抑制なのだから、そこに下水道なんて引いている場合じゃない。

  

住民の加齢という大問題 

北海道の夕張市は石炭産業が衰え、10万人以上いた人口が3万人ほどに減った時点でもなお、市営の集合住宅の建設を続けていた。 

夕張の人口は9000人弱。「過疎だから家が余るんだ」と言う人がいるが、それは間違い。

そもそも10万人以上が住んでいた土地に、容積率を利用して20万人分くらいの住宅を供給していれば、家が余るのは当然。  

北海道には、人口減少が続く平成以降に、元の市街地の4~5倍の規模で郊外開発をしている例が多かった。

帯広都市圏も郊外の調整区域を市街化区域に編入する区画整理を行った結果、JR帯広駅を中心とする街なかは、駐車場と空き家だらけのスカスカ状態になってしまった。

税金を投入してインフラを整備してきた中心部がスポンジ状態になる一方で、郊外での宅地化が続けられ、居住地が薄く広がってしまった。 

苫小牧も、また2010年代に入って市の東側(沼ノ端地区)の大区画整理をし、イオンの大型ショッピングモールを誘致して市街地を広げたが、駅前に4つあった大型店は全部潰れてしまった。


無計画な都市計画

人口減少社会において、「人口を増やしたい」という市町村が、新しい住民を呼び込むために、本来は市街化を抑制すべき市街化調整区域の開発規制を過度に緩和して、新規の宅地開発にゴーサインを出している。 

結局は、近隣自治体同士での人口奪い合い合戦となる。

山梨県の昭和町ではこの5年間で、0~14歳の子供人口が150人増え、生産年齢人口(15~64歳)も750人増えている。それぞれ5%増と6・4%増で、全国有数だ。

ところが、昭和町の総人口は1850人増えている。0~14歳が150人、15~64歳が750人の増加だから、差し引き65歳以上が950人増えていることになる。  

つまり、高齢者が異常に増えている。

子供が5%増、現役世代が6%増、それに対し高齢者は32%増だ。


福祉関係の費用増は深刻

なぜこうなったのかと言えば、40年前から乱開発をせっせとやってきた結果である。

当時30代前後で昭和町に流れ込んできた人たちが、いま続々と65歳を超える高齢者になっている。

人口を増やそうとして若い世代を呼び込むと、数十年後には高齢者の大激増に見舞われる。

総人口だけを見て増えていると安心するのは大間違い。

住民の加齢をまったく考えていない都市計画の先に待つのは、財政破綻だ。

 

想像を絶する「家余り時代」に 

東京圏でも人口を増やすために、自治体があの手この手で都市計画規制を緩和し、郊外の農地エリアの開発や、都心のタワーマンション建設を許容しているが、これも同じ状況を生むことになると言える。

首都圏の苦境は昭和町どころではない。

東京・埼玉・千葉・神奈川の首都圏一都三県の人口は最近5年間に51万人増えた。

うち42万人が、首都圏外から流れ込んできた現役世代だ。  

だが総人ではなく、生産年齢人口は増加しているか、高齢者は増えていないか、これが経済や財政には重要なのだ。

最近5年間の首都圏には生産年齢人口42万人が流れ込んできた話をしましたが、それではこの間に首都圏の生産年齢人口は、結局何人増加したか?


75万人の減少 

首都圏一都三県では、この5年間に、65歳以上の住民が134万人も増加した。

さらに、そのうち80歳以上だけを取り出すと52万人の増加となる。

この5年間で総人口が51万人増、うち80歳以上が52万人増であるから、つまり増えたのは80歳以上だけで、79歳以下は減っていることになる。

これも目先の人口増加ばかりを追って都市開発を無計画に行ったことのツケだ。

現役世代が減って高齢者が増えると、税収が減る一方で社会保障関連のコストがどんどん膨らむことになる。

自治体にとっては深刻な危機だ。


空き家も大量に発生する

3年半前

総務省の調査では、一都三県には空き家が203万戸ある。

全国の空き家の4分の1が首都圏にあるので、一戸に2名住むとして人口が400万人増えないと埋まらない。

だが過去5年間の増加は51万人で、しかも80歳以上しか増えていない。  

お台場の現在の人口構成と40年前の高島平の人口構成を調べたところ、2つの人口ピラミッドがぴったり重なった。

つまり、お台場の高層マンション群も、40年後には現在の高島平のような高齢化が進んだ街になる。

密集して建てられたお台場の超高層マンション群の多くは、分譲であるため、住人が入れ替わりにくく、ローンを抱えたまま、そこで年を取っていく人々が続出する。

 

これが首都圏の現実だ

やがて首都圏にいる865万人もの高齢者が亡くなってゆき、そのときに、住んでいる家を相続人が、うまく相続し、住んでくれればよいが。 

今の乳幼児数は団塊世代の半分なので、相続人も足りない。

日本は想像を絶する「家余り時代」に突入することになる。 

こういう時代でも、なお家を購入する人がいるという現実だ。 

郊外で、いまだに新築住宅が売れています。「3000万円台なら安い」と思って買っているのかもしれないが、長期的に見ると資産になるとは思えないし、将来子供たちが相続した際に売ろうとしても、住宅過剰の時代になっていて売れない。 

固定資産税や管理コストを負担し続けなければならない「不動産」になるのは目に見えているのに。 ただ郊外といっても、東京圏では、都心まで40~50分かかるような場所では、新築住宅は売れなくなってきている。


埼玉県の春日部

東武伊勢崎線は地下鉄日比谷線や半蔵門線とも直通運転している路線で、通勤するのにそれほど悪い場所ではなく、国道4号や16号も走っているし、東北自動車道へのアクセスもいいし、お隣の越谷にはイオンレイクタウンという巨大ショッピングモールもある。

住みやすい街であるにもかかわらず、春日部は人口減少が進んでいて、新規の団地開発もない。

一方、関西だと、大阪府北部や神戸市などでは、いまも盛んに新規の住宅供給があって、都心から40分の駅からさらにバスで20分もかかるようなところの家がまだ売れているのが実態だ。  

そんなところに家を建てる業者が後を絶たないのは、つまるところ買う人のマインドに問題がある。

 

なぜ将来資産価値を失うような場所に家を造るのか?

買う人がいるから。需要があるから。

市場経済における多数派が常に正しいとは限らない。

今人気のあるものがいいものなんだと言うなら、経営者は要らない。

需要の多くは、長く続かないバブルなのだ。

資産価値という観点から住宅を見れば、希少性が重視されるはずだが、実態はそうなっていない。


戦後の日本の住宅業界

「供給を増やせば市場価値も上がる」という、市場経済原理とは真逆の、謎の信念によって支えられてきた。原理的には、供給を増やせば値段は下がるのが当然なのだが。

同じ広さの土地を開発する場合、容積率を上げればより多くの住戸が作れることから、その土地の価値は上がる。

これは典型的な「合成の誤謬」という。

その土地だけみれば確かにその時には価値は上がるのだが、そうなると隣の土地でも同じことを始めることで、つまり、エリア全体で見ればあっという間に供給過剰になって地価が下がるのだ。

湯沢町(新潟県)のリゾートマンションが典型といえる。

都市計画もないスキー場エリアで、バブルの頃に林立した超高層のリゾートマンションの部屋が、今は超格安で売りに出ている。  

いまや100万円でも売れない状態なのだ。

結局、持ち主にしてみれば資産価値は暴落しても、古くなった家電製品のようにどこかに廃棄することもできない。 所有権がある以上、固定資産税や管理費・修繕積立金という支出だけは負担しなければならない。

いくつかのマンションでは、水回りが老朽化しているために、蛇口から出る水道水も飲用には出来ずに、住民はペットボトルの水を買っていると聞く。


住宅業界の人が買わない物件  

実際には開発業者は超高層住宅の末路は知っている。

でも「買う奴がいるのだから、今売れればいい」という「売り逃げの論理」で突っ走っている。  

東京都心に急増している分譲タワーマンションの多くは、近い将来、高齢者が詰まった「新・山村」になって、その処理は大きな社会問題になっていく。

その頃になって製造物責任を問われるのは、売り逃げを図った不動産会社なのだ。  

その証拠に、建築や住宅業界の人間はほとんど、タワーマンションを買っていない。


住宅業界の人間は超高層物件を買わない

首都圏の家を買うリスクは大きすぎる。

タワーマンションは修繕コストも膨大だ。

大規模修繕や建て替えの際に住民の意見をまとめなくてはならないけれど、何百世帯もの合意を得るのは非常に難しい。

消防車の梯子が届かないような高さの建物の修繕は技術的にハードルが高い。

湯沢町のように、十分な修繕ができない「立ち腐れ超高層」が激増することになる。

そして、劣悪な状態になったマンションであっても、居住者は税金や管理費・修繕積立金を負担し続けなければならない。

戸建てもタワーマンションも大量に余る時代になってきているのは予想ではなく現実なのだ。

こうなった以上、今すでにある空き家を中古住宅として流通できる建物にして売買・賃貸したり、古い空き家は解体・除却することが一般化するような仕組みを整えつつ、都市計画を厳格にし、規制を強化すべきだ。

高さ制限の厳格な国立市(東京都)では、高層マンションを建設した業者に、住民が訴訟を起こし、一審では20メートルを超える部分の撤去を命じた。

地元の不動産業者が「不当な判決だ。これで国立の地価は暴落する」と言っていたが、現実には国立の地価は上昇している。

「地区計画」という都市計画制度による規制で、実質的に住宅の供給が一定程度制限されていても、住宅過剰時代はやってくる。


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